- ナノ -


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 前方に湧き上がった入道雲の頂が、ぺたりと平らになっている。かなとこ雲だな、と竜は呟いた。へんてこな形の雲だね。竜の背に乗っている人間は笑う。
 そう言うが、あれは侮れない雲だ。強い雨風を運んでくる、と竜。そんなの、大丈夫だよ。あの平べったいところに乗っかっちゃったらいい。人間はずいぶん無邪気だった。竜はやれやれという顔をしながら、しかし、どこか穏やかな気持ちになっていた。


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