- ナノ -


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 赤茶の鱗を持つ龍が、竜に問いかける。街を後にして、旅に出なければよかったと思うことはないのかい? 竜は少し考えてから、答えた。大切に思う誰かとすごせる時間は長かっただろう。毎日戻ることのできる場所もあったはず。だがそれでも、わたしにとって、旅こそ生きることだ。それに……
 それに? 龍が顔を覗き込む。離れることでわかることもあるのだ、と竜は呟くように言った。


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