- ナノ -


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 少女が竜に手渡したのは、竜の小さな人形だった。街を離れ、再び旅に出る竜のために、一生懸命縫って作ったのだ。初めての鍼仕事だったのだろう。刺し傷がその手に見て取れた。
 竜はそっと受け取ると、感謝の気持ちを少女に伝えた。よくしなる丈夫な紐で首から下げる。少女の思いがこもった小さな竜は、ほんものの竜とともに、空へ高く舞い上がった。


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