- ナノ -


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 体をうんと伸ばしながら竜は考えた。飛んで、食べて、眠り、何気なく動かしたり使ったりしている自分の体のことを、いったいどれだけ知っているのだろう。伸ばしついでに意識を巡らせてみる。頭、手足、翼、胴、尻尾。どうして動かせるのか。どうやって動いているのか。自分のことなのにわからないことは多い。そう思うと、飛ぶことも、ここに生きていることも、途方もない奇跡のように感じられた。


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