- ナノ -
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ぼくにはなんにもないんだ、と少年は言った。得意なことも、好きって思えることも。
わたしもそうだったよ、と竜。だから試してみた。少しやってみたいと思えること、嫌じゃないこと、まだしたことがないこと。何でも。
それでドラゴンさんは、何か見つかったの? 少年の問いに、竜は頷く。見つかったよ。ふうん、と少年は空を見上げる。先ほどまで雨に濡れていた空は、どこか不安になるほどに澄み渡っていた。
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