- ナノ -


559
 
 竜よりも遥かに丈の高い木々が繁茂する森があった。外から届く光も枝葉に遮られ、進めば進むほど暗さが増してゆく。そんなとき、ちらと光が見えた。発光する茸かと竜は思ったが、森の闇が深まるにつれて光は明るく、至る所で輝き出し、やがて竜は光の海に覆われてしまった。夜空と、そこに浮かぶ星々に囲われたかのように……いや、自分は飛んでいたのではないか? 夜空を……。森の中など歩いてはおらず……。
 どれだけの時間が経ったのだろう。はっと気がついてみると、光は全て消えていた。木の影から一頭の狐が飛び出し、尻尾を揺らしながら森の奥に去っていった。


[