- ナノ -


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 もしかしてあれ、と人間が竜の背中から海を指差した。前方に、海面を跳ねる数頭の生き物の姿がある。イルカだ。軽やかな身のこなしに思わず竜と人が視線を注いでいると、彼らの後ろを同じように跳ねてついていく者がいる。なんとそれは、水竜の一種であった。水竜は竜たちに気づくと、空中に跳ねたところで一度大きく手を振って、そのままイルカとどこかへ行ってしまった。楽しそうだったね、と目をまるくする人間。ああ、と竜は頷いた。


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