- ナノ -


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 どうしたんだい、と少年。目の前には頭から足先まで濡れそぼった竜が立ち尽くしていた。夕立にやられた。ぽつりと一言、竜。心なしか、とほほ、と尻尾の先が下を向いているようだ。少年は家に駆け込んだかと思うと、ありったけの布を持って舞い戻り、竜の体を拭き始めた。そのままでもじき乾く、という竜の言葉など意にも介さない。竜でも風邪とか引いちゃうかもじゃん。そう言って拭き進める少年に、竜はありがとう、と首を垂れた。


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