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- ナノ -


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 ふたりがけの白いブランコを、姉妹が漕いでいた。竜さん、そこにいるんでしょ。ブランコ、ゆらすの手伝ってよ。大きな庭の隅に縮こまるように体をまるめていた竜は、驚いて姉妹の方を見る。いいから、はやく。竜は羽をたたんだまま、ゆっくり姉妹のところへゆき、鼻先でブランコをそっと前に押した。それでも、姉妹が漕ぐより、ブランコはずっと高みに達する。わあ、お空を飛んでるみたい。そう言ってはしゃぐ姉妹を、竜はぼんやりと見ていた。姉が竜に言った。わたしたち、あなたのこと、こわいとかぜんぜん思わないよ。竜の目に、かすかに、ひかりが揺れた。


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