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- ナノ -


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 竜は言葉を失った。ここには川が流れていたはずだった。星のようなきらめきを湛えながら、水底までのぞくことのできる透明な流れが、右へ、左へ、と、ゆるやかに続いていたのだ。地上へ舞い降り、その場所を見遣る。無数の乾いた岩が積み重なり、あたりはしん、と静まり返っていた。
 竜は、かつての川のすがたに思いを馳せた。岩の間からのぞいた一輪のちいさな白い花が、かすかな風に揺れていた。


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