- ナノ -


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 すごいね君は、と彼。人間でさえ同じ人間にがっかりするのに、人に対してどうしてそう、希望を持ち続けていられるんだい。竜は黙っている。答えたくない、か。彼はそう言い、それとも答えられないのかな、と口の端に笑みを浮かべた。何か言おうとした竜を片手で制して、いいさ、と空を仰ぐ。見捨てないでいてくれて、ありがとな。風に消えそうなほどの小さな声で、彼は呟いた。


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