- ナノ -
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あの人のどこに惚れたかだって? 竜にあたたかな湯を掛けながら、宿屋の女将が言った。竜に触れる、その手つきさ。あんなに思いやりを込めて竜に接する人なんて見たことなかったよ。
どこかふわりとしている宿の主人だったが、とても愛されているようだ。そして──竜の体を洗ってくれる女将の手からも優しさと温もりが伝わってくる。竜は目を細め、彼女に身を委ねた。
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