- ナノ -


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 その市のとある店では、果物が飛ぶように売れていた。どの果実を買っても甘く、といっても甘すぎず、酸味などとの絶妙な味のバランスが保たれているらしい。竜が人々の後ろから首を伸ばして店を覗くと、積まれた林檎の上に羽のない小竜がちょこんと座っていた。よい状態の果物を見抜いて店を手伝っているのだな、と竜が竜の言葉で囁いた。小竜はにっこりと笑った。


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