- ナノ -
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燃えるような朝焼けは、空を翔ける竜をも染め上げた。風を切る翼にじわりと空気の重さを感じる。洞穴へ戻るのが先か、降り始めるのが先か。雨との競走になりそうだ。
世界は不思議なほど静まり返っている。降り出す雨の、その最初の音をつかまえようと耳を澄ませているように。
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