- ナノ -


635

 突然、笑みをこぼした少女に、竜は怪訝な顔をする。あの夕日くらい大きなあめだまだったら、ドラゴンさんもおいしいって思うんじゃないかな。少女の言葉に、竜もふっと笑った。先日、飴というものを初めて食べた。しかし、竜にはあまりに小さすぎて、味も食感もよくわからなかったのだ。
 海の向こうに夕日はゆっくりと沈んでいく。あーあ、海があめだま食べちゃった、と少女が言った。


[