ペンションの中は灯りこそついていたが、全く人の気配がなかった。

一体、ここで何があったと言うのか。

他の宿泊客はどうなってしまったのだろう。

そんなことをぐるぐる考えている間にも、尾形さんは慎重に、そして的確に現状を把握していった。

「廊下の奥の部屋とバスルームに遺体が一つずつ。場所からしてオーナー夫婦のものだろう」

「け、警察に…!」

矢島さんがロビーにある電話に飛び付いたが、受話器を持ち上げた途端、絶望したような表情になった。

「音がしない…」

「電話線を切られたな」

尾形さんが冷静に言った。
スマホは圏外で使えない。

「二階も調べるぞ」

階段を上がって行く尾形さんについて私もそろりそろりと足音を忍ばせながら上がっていく。
矢島さん達が後ろからついて来ると、ギシギシと小さく階段が鳴る音がした。
そうして上がった先にも女性が一人倒れていた。
頭から血を流していて、階段にまで血が流れ落ちている。

「尾形さん…!」

尾形さんが、静かに、と目線で伝えてくる。
そして、倒れている女性の脈を確認し、また銃を構え直した。
手遅れだということなのだろう。

尾形さんは、ひとつひとつドアを開けて室内を確かめていく。
新たな死体を見つける度に、小林さんが悲痛な声をあげた。

「この部屋は?」

「僕達の部屋です」

尾形さんがドアノブを掴むと、ドアは呆気なく開いた。

「そんな…鍵を閉めてきたはずなのに…」

矢島さんが呆然と呟く。

二人に待っていろと合図して、尾形さんが室内に入っていく。
私もすぐ後ろに張り付くようにしてついて行った。

「きゃあ!?」

悲鳴が聞こえた方向に尾形さんがさっと銃を向ける。
後ろにいたはずの小林さんがいないと思ったら、彼女は見知らぬ男性に捕まって頭に拳銃を突き付けられていた。

「動くな。動けば、この女を殺」

みなまで言い終わる前に、ドン!と音がして男性の頭部が吹っ飛ぶ。
尾形さんが撃ったのだ。

廊下に崩れ落ちるように座り込んだ小林さんに矢島さんが駆け寄る。

まさか犯人も、人質をとっているのに撃つとは思わなかっただろう。
いくらこのペンションの人間を皆殺しにした犯人だからといって、問答無用で撃ち殺してしまうなんて相変わらず容赦がない人だ。

「戻るぞ」

「でも、この人は…」

「そのままにしておけ。戻って警察に通報する」

「え、あっ、はいッ!」


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