犯人は、テレビで報道されていた銀行強盗の一人だった。

仲間を殺害した犯人は、あのペンションの宿泊客に成り済まして、朝になったら宅配便で届くはずの銀行強盗で奪った現金を持って高跳びする予定だったらしい。

ペンションの宿泊客の中で唯一生き残った矢島さんと小林さんは事情聴取を受けたが、二人とも少しずつ元気を取り戻しているようだ。

私と尾形さんも事情聴取を受けたが、意外なほどあっさりと解放された。
犯人を撃ち殺した件についてもっと突っ込まれると思っていただけに拍子抜けしてしまったほどだ。

「警察には顔がきくんでな」

と尾形さんが言っていたので、私は深く追求することはしなかった。
聞いても無駄だと思ったからだ。

とにかく、昔から謎の多い人である。

「せっかくのスキー旅行が台無しになっちまったな」

「仕方ないですよ。矢島さん達が無事で良かったです」

「あいつらが俺達の所に辿り着かずにペンションに戻っていたら命は無かっただろうな」

などと尾形さんが恐ろしいことを言って笑う。
本当に無事で良かった…。

「次は温泉に行こうぜ。慰安旅行だ」

「いいですね!」


しかし、そこでもまた事件に巻き込まれてしまうことを、この時の私はまだ知る由も無かった。


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