男性は矢島さん、
女性は小林さんというらしい。

シチューを食べ終え、暖房の効いた部屋でしばらく休んだお陰で大分顔色が良くなった二人は、これ以上迷惑をかけるわけにはいかないからペンションに帰りますと言い出したので、尾形さんが送って行くことになった。

「私も一緒に行きます」

「わかった。しっかり着て来い」

尾形さんに言われて部屋で着替えて来ると、三人はもう玄関にいて何やら話し合っていた。
聞こえてきた内容からして事故を起こした車の処理に関することのようだ。

「行くぞ、なまえ」

尾形さんについて車まで行って助手席に乗り込む。
矢島さん達は後部座席に並んで座った。

吹雪のせいで私にはどこをどう走っているのかさっぱりわからなかったが、尾形さんは右に左にハンドルをきって車を走らせていく。

やがて、前方にオレンジ色の灯りが見えて来た。
ペンションの灯りだ。

……何か、おかしい。

何のへんてつもないペンションのはずなのに、奇妙な違和感を覚えた。
同時に胸騒ぎを感じて、運転席の尾形さんを見る。
尾形さんも何らかの異常を感じとっているようだった。

「車から降りたら、俺から離れるな」

耳元で告げられた言葉に頷くと、尾形さんはペンションの前に車を停めた。

後部座席から降りて来た二人は、尾形さんがトランクから猟銃を取り出したのを見てギョッとしていた。
無理もない反応だと思う。

「あそこに死体がある」

尾形さんがペンションの入口のほうを見ながら言った。

吹雪のせいでよく見えない。

だが、近づいて行くと、それが目に飛び込んで来た。
雪に埋もれた、男性の死体が。

「きゃっ…!?」

小林さんが矢島さんに縋りつく。

尾形さんが念のため脈を確認したが、やはりもう亡くなって随分時間が経っているようだった。

「中に入るぞ」


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