さすがにこの季節は陽が落ちるのが早い。
ペンションに着く頃には辺りは完全に暗くなっていた。
ちらちらと舞う程度だった雪も、本格的に降りはじめている。

車のライトに照らされて視界を遮る白い雪に、普段よりも気を引き締めて運転していたせいか、前方にペンションの外観が見えた時にはほっとした。
何しろ不二くんの命を預かっているわけだから、万が一にも事故を起こすような事があってはならない。
ペンションまでのほんの五分程度の道のりがとてつもなく長く感じられた。

もっとも、信号も渋滞もない雪道を車で五分なので、人間が自分の足で歩くとしたらかなりの距離になるのだが。
しかも雪だし、夜だし、周りに他の建物はないし、下手したら遭難しかねない。


「もしもいま車の前に突然イタチか何かが飛び出してきて事故って横転したりしたら大変な事になるかもしれないね」

「ちょ、ふふふ不二くん…!」


不二くんが洒落にならない冗談を言う。
必死な表情でハンドルを握る私がよほどおかしかったのか、彼はクスクス笑っていた。


「だからボクが運転するって言ったのに」

「だって…」


一応誘った側としてのマナーというか、私としては当然の義務を果たしたつもりでいたのだけど、不二くんの考えは違ったようだ。


「無理して気を遣う必要なんてないよ。ボクが来たくて来たんだから。ね?」

「うん…有難う」

「うん。じゃあ、もうこれからは遠慮は無しで」


ペンションの前の駐車場に車を停めて降りると、不二くんが私の分のスキーも持ってくれた。
二人で並んでペンションに向かう。



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