叔父が経営するペンションは、外観はログキャビン風で、内装は白を基調としたおしゃれな建物だった。

実はこのペンションは、あるゲームに出てくるペンションに造りがよく似ているということで、一時期かなり話題になったことがある。
吹雪に閉ざされたペンションの中で殺人事件が起こるという内容のゲームだ。

でも、そのゲームにはモデルとなったペンションが他にちゃんと存在していたため、ただ似ているというだけで実際には『本物』ではないこのペンションは、月日とともに次第に人々の話題にのぼることは少なくなっていった。
今は昔からの常連客や、ゲームの事など知らない普通のスキー客で、オンオフシーズン共にそこそこ賑わっている。


「足元に気をつけて。雪で滑らないようにね」

「うん」


玄関ポーチはウッドデッキになっていて、地面より少し高めの位置にある。
木製の階段を上がってその玄関ドアを開けると、小さなスペースがあり、正面のもう一つドアを開けて室内に入るようになっていた。
こうした雪深い土地の建物では良くある構造だ。

乾燥室に二人分のスキー具を置いてから、不二くんと一緒に中に入る。


「お帰り。その様子だと夕方まで目一杯楽しんできたみたいだね」


ペンションの玄関ホールにあたるここは談話室も兼ねた空間になっていて、すぐ正面にはフロントがある。
そのフロントの前で叔父が迎えてくれた。
車の音で私達が帰って来た事が分かったのだろう。


「雪が本格的になって来なければ、そのままナイターでも良かったんですけど」

「ハハハ、それはなまえが保たないんじゃないかな」

「ふふ、確かに」


叔父さんも不二くんも言いたい放題だ。
でも実際、続けてナイターまでやるような体力はないので、反論出来ないのが悔しい。

ふと視線を感じて左側を見ると、談話室に置かれた緑色のソファに中年夫婦が一組座っているのが見えた。
奥さんのほうと目が合い、軽く頭を下げて会釈をする。
ご主人のほうはテレビに釘付けになっているようだ。どうやら今はニュースの時間らしく、画面には株価が映っている。


「夕食は七時だから、シャワーでも浴びて少しゆっくりするといい」


叔父さんの言葉に、私は視線を叔父さんと不二くんに戻して頷いた。


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