「まずはこれを読め」

なまえの部屋に「話がある」とやって来たリボーンは、そう言って一枚のプリントを彼女に向かって差し出した。

「『異父重複受精』?」

渡されたなまえは、プリントの一番上に大きなフォントで印刷された文字を読み上げて首を傾げた。
文字そのものは難しいものではないので簡単に読めたものの、見慣れない単語である。
リボーンの意図がまったくわからない。

内容は──どうやらイタリアで発表された論文をもとにした記事の一部分であるらしい。
なまえはクエスチョンマークを頭上に浮かべながら、文章を目で追いかけ始めた。

「『──排卵中に、複数の卵子が複数の精子によってほぼ同時に受精することがある。通常は2つの卵が同じ父親の精子を受精し、二卵性双生児を妊娠することになるが、何らかの理由により二人以上の男性の精子が相前後して女性の体内に入ると、異父重複受精が生じる可能性がある』…?? これがどうかしたの?リボーン」

「ああ」

リボーンは黒い中折れ帽をグイと押し下げて、目元に陰を落としながら薄く笑ってみせた。

「つまり、だ。お前が骸とヒバリの子供を同時に孕む事も不可能ではないという事だ」

「……いま、物凄く怖い事を言われた気がするんだけど」

「というわけで、二人を呼んでおいたからな。しっかりヤれよ」

「無茶言うな!!!」

弟の綱吉が憑依したかの如き鋭いツッコミが炸裂したが、それで動じる男ではない。
リボーンはニッと笑うと、さらなる追い撃ちをかけてきた。

「お前がいつまでもグズグズしてやがるからいけないんだぞ。潔く責任を取って二人とも面倒見てヤれ」

「さっきから"ヤ"が片仮名で聞こえる!変な意味に聞こえるよ!」

「これがボンゴレの血の"見透かす力"か…さすがだな」

「そこ感心するところじゃないでしょ!あの二人を同時になんて無理だよ!絶対死んじゃうから!死ぬから!」

「仕方ねーな……確率は落ちるが、一人が終わった後もう一人とするまで一時間ぐらい間を開けてもいいぞ──おい、逃げるな」

窓を開いて桟に足をかけたなまえをリボーンが引っ張り戻すのとほぼ同時に、ノックの音が響いた。

「入っていいぞ」

ドアの向こうに呼びかけながらリボーンはじたばたともがくなまえを押さえつける。

「やあ」

「こんにちは」

「恭弥さん!骸っ!」

なまえは一縷の望みをかけて入って来た二人の青年を懇願の眼で見上げたが──彼らの顔に浮かぶ表情を目にした途端、リボーンの下で震え上がった。
端整な顔に浮かぶそれは獲物を狙う肉食獣のものだったからだ。
──ヤる気だ、この人達!

「よく来てくれたな。話した通りだ。後は好きにヤっていいぞ」

「ワオ、本当にいいのかい?」

「クフフ…では遠慮なく」

「な、なんでこんな時だけ仲良く共闘するのーー!」

「いいですね、その反応。最高にそそられます」

「怖がらないでいいよ。気持ちいいことだけしてあげる」


万事休す。


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