今日は今季一番ではないかと思うほど冷え込んでいる。
底冷えのする寒さとはこういうことを言うのだろうか。もしかしたら雪が降るのかもしれない。それくらい寒い。
なかなか暖かくならない布団の中で震えながら、私は小さい頃のことを思い出していた。
傑くんと知り合ってからは家族ぐるみのお付き合いをしていて、私と傑くんはよくお互いの家に遊びに行っては二人で色々な話をしたものだった。呪霊が見えるという共通の秘密が私達を強く結びつけていたのだと思う。今はそれだけではないけど。
あの頃はまだ幼かったからお昼寝も一緒にしていた。ひとつの布団で寄り添いあって眠っていると、何も恐れるものはないように思えた。その時から既に傑くんに護られていたのだと今ならわかる。

そんなことを考えていたら、いてもたってもいられなくなって、男子寮へと忍び込んでしまっていた。
傑くんの部屋のドアを控えめにノックすると、すぐにそれが開かれて、スウェット姿の傑くんに迎え入れられた。

「寒くて眠れなかったのかい?」

傑くんはちょっと可笑しそうに言って私をベッドに招き入れてくれた。
私を壁側に寝かせて、その隣へ大きな身体を滑り込ませた傑くんが至近距離で優しく微笑む。

「これでもう寒くないだろう?」

「うん」

私は身体を下にずらして傑くんの胸に顔をうずめるようにして彼に抱きついた。柔軟剤の香りに混ざって大好きな傑くんの匂いがする。それにとてもあたたかい。逞しい胸板から規則的に響いてくる心音を聞いていると、何だか凄く安心出来た。
外は冷たい雨が降っているけど、傑くんのお陰で心も身体もぽかぽかしていてあたたかい。

「傑くん、あったかい」

「……私は理性を試されているのかな」

苦笑した傑くんが優しく背中を撫でてくれる。あやすようなそれと傑くんの体温があまりにも心地よくて、ああ、傑くんが好きだなあとしみじみ思いながらとろとろと眠りに落ちていく。

傑くんのぬくもりに包まれながら私は朝までぐっすり眠ることが出来たのだけど、翌朝おはようのキスをしてくれた傑くんは何故か少し寝不足気味に見えた。


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