知らない街に独りでいる夢を見た。

傑くん達に連絡しようとするけど、携帯電話がおかしなことになっていたり、何度も番号を押し間違えてしまってなかなか電話が出来ない。
高専に帰ろうとしても、知らない駅だから乗り換え方がわからなくて手間取った上に満員で乗れなかったり、やっと乗れたと思ったら逆方向行きで慌てて降りたりと散々どたばたした末に何とか高専近くの町まで戻って来ることが出来た。
町に着くと、何故か悟くんがお父さん、傑くんがお母さんで、お母さんである傑くんが死んでしまう運命なのを防ぐために呪詛師と戦うことになり、池から出てくる呪詛師に操られた鳥を片っ端から反転術式で元に戻すという、何ともおかしな夢だった。

「というか、なんで俺と傑が夫婦設定なんだよ。俺はお前と結婚するんだけど?父親じゃなくて旦那だろ」

「そこはほら夢だから」

「だとしても私が君の母親という設定はいただけないな。君と結婚して、君が私達の子の母親になるのだからね」

「そこそんなに大事?」

「二度言いたいくらい大事だよ」

夢の中で悟くんと傑くんが夫婦だった理由には実は心当たりがある。
最近はずっと二人で組んで任務に出かけてばかりだから、置いて行かれてしまったような疎外感と寂しさを感じていたのだ。
変な夢を見たのもそのせいなのかもしれない。
私がそう言うと、二人は顔を見合せた後、私をぎゅっと抱き締めた。後ろからバックハグをするように傑くんが、正面からは悟くんが私の顔を自分の胸に埋めさせるように抱き締めてくる。二人のあたたかくて逞しい硬い身体にサンドされてぎゅうぎゅうに抱き締められた私は何だかとても安心して、思わず涙ぐんでしまった。

「寂しい思いをさせてごめん」

「悪かった。これからは気をつけるから」

「傑くん……悟くん……」

「だからもう泣くな」

悟くんの綺麗な顔が近付いてきてキスをされそうになったかと思うと、すかさず傑くんの大きな手が間に割り込んできた。

「調子に乗るんじゃない。抜け駆けするなよ悟」

「は?お前何言っちゃってんの?こいつは俺のですけど?」

「君こそ勘違いするな。なまえは私のものだよ。初めて逢った時からずっとね」

「そりゃただの幼馴染みってだけだろ。思い込み激しくて痛いやつ」

「外で話そうか、悟」

「寂しんぼか?一人で行けよ」

ズズズ……ゴゴゴゴ……
呪霊を出して教育的指導をおこなう体勢に入った傑くんを前に、余裕の表情で挑発する悟くん。

「なまえ、こっち」

硝子ちゃんが手を引いて二人から引き離してくれる。

「クズ共は放っておいて一緒にテスト勉強しよ」

「うん」

ごめんね、悟くん傑くん。
二人のことは大好きだけど、女の子同士の友情も大切にしたいの。



一途な初恋をかけた闘いの決着がつく日はまだまだやって来そうにない。


 戻る 

- ナノ -