真夜中の少し前辺り、寝る準備をしていたら急に雨が降ってきた。いきなりザーザー降りだ。

「雨ザーザー降ってきて、ってなんだっけ」

網戸にして開けてあった窓を閉め、エアコンをつけたところで、そうだ、『かわいいコックさん』の絵描き歌だったと思い出した。

「懐かしいなぁ」

子供の時に習った絵描き歌だとか遊びなんかは意外と記憶に残っているものなんだなと懐かしく思う。
そういえば、こんなのもあった。

あ〜ぶく立った煮え立った 煮えたかどうだか食べてみよ
むしゃむしゃむしゃ まだ煮えない
あ〜ぶく立った煮え立った 煮えたかどうだか食べてみよ
むしゃむしゃむしゃ もう煮えた

戸棚にしまって 鍵を閉めてガチャガチャガチャ
お風呂に入って ゴシゴシゴシ
歯を磨いてシュッシュッシュ
お布団敷いて寝ましょ

トントントン 何の音?
 風の音
あ〜良かった

子供の頃はこれが怖かったんだよね。友達と歌いながらドキドキしていたものだ。

足元のあたりの掛け布団が盛り上がって、次第に上のほうへと移動してくる。
まるで誰かが中に潜り込んでいるみたいに。


トントントン 何の音?

「お化けの音」

手で持ち上げた掛け布団の中の暗闇から整った白い顔が現れて甘いテノールで囁いたかと思うと、次の瞬間には布団の中に引きずり込まれていた。

元通りぺちゃんこになった掛け布団の中にはもう誰もいない。
後は雨音が響くばかりだった。


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