明日も仕事なのに、動画サイトでショートホラーを観るのがやめられない。既に寝る前の日課と化しつつある。
一本が五分から十分と短めの動画ということもあり、ついつい次から次へと見てしまう。難しく考える必要がなくて、ちょっとひやっとなる感じがいいんだよね。

「そろそろ寝ないとなー」

今日も早めに布団に入ったはずなのに、気がつけばもうこんな時間になっていた。明日のためにもあまり遅くならないようにしないと。

「……ん?」

今まではスマホに意識を集中させていたのでわからなかったのだが、窓の外から話し声が聞こえてくることに気がついた。
男の人の声だけど怖い感じではない。むしろ耳に心地よくて思わず聞き入ってしまいそうなほど艶のある美声だった。

──何だか楽しそう。

恋人に語りかけているのか、甘くてとても優しい声だ。

でも、ここ一階じゃないんだけどな。

どうして窓のすぐ外から聞こえるんだろう。裏の建物から聞こえてくるとか?

まあ、いいや。
朝になったら窓を開けて確かめてみよう。

そんな風に考えていたら声が言った。


「朝ですよ。開けて下さい」


言うまでもなく外はまだ真っ暗だ。

カーテンが揺れる。

低く小さな忍び笑いとともに、ゆっくりと窓を開ける白い手が見えた。


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