※夏油生存教師if



今日の午後は任務が無かったため、夏油先生に体術の稽古をつけて貰っていた。
と言っても、一年生全員が束になってかかっても敵わなくて、ただひたすら投げ飛ばされたり蹴り飛ばされたりするばかりだったのだけど。
伏黒くんはまだ伸びしろがあると言われていたし、虎杖くんは将来が楽しみだと花丸の評価を貰っていた。

パンダ先輩との特訓で受け身を取るのだけは上手くなっていたから良かったものの、基本となる体力に大きな差があるため、私も野薔薇ちゃんも既にグロッキー気味だ。

「なんでアンタはけろっとしてんのよ。このゴリラ」

「俺、もしかしてディスられてる?」

野薔薇ちゃん、虎杖くんはゴリラじゃないよ。ゴリラは夏油先生に三節棍でぶん殴られたら防御する暇もなく死ぬからね。
でも、言いたいことはよくわかる。
七海さんもあの紳士的な外見でゴリゴリの武闘派だし、呪術師は意外と体術出来て当たり前な世界なのかもしれない。

「なまえも釘崎も良く頑張っているよ。受け身の取り方はもう完璧だね」

「褒められてる気がしない……」

「まあまあ。連携をとって戦うなら、近接は虎杖に任せて、伏黒と釘崎は中距離から攻撃、なまえは後方支援でバランスは取れているんじゃないかな」

「確かにそうですね」

夏油先生の言葉に伏黒くんが頷く。
このメンバーで後方支援となると、私はもっと戦略について学ぶ必要がありそうだ。少なくとも座学で伏黒くんと並ぶくらい勉強しなくてはならないだろう。

「ある程度の状況を想定した上でどう動けばいいかなら、多少は教えてあげられるよ。それを活かして仲間に指示を出せるようにすればいい」

「ありがとうございます。是非お願いします」

ぺこりと下げた頭を大きな手で優しく撫でられる。

「ああ、すまない。あまりにも可愛かったから、ついね」

瞳を細めて微笑む夏油先生に、大丈夫ですと答えたかったのに出来なかった。
いつの間にか背後にいた五条先生に一瞬のうちに抱き上げられてその場から拉致されてしまったからだ。
あっという間に皆の姿が遠ざかっていく。
ひと一人抱えているというのに凄いスピードだ。さすが五条先生。
じゃなくて!

「お、降ろして下さい!」

「嫌だ」

五条先生はきっぱり言って私を抱く腕の力を強くした。

「出張から帰ってきたら、僕の生徒達が傑に取られてたんだよ。酷くない?」

「酷くないです」

「ひどっ!しかも、お前、傑に食べられそうになってたし!」

「そんな、五条先生じゃないんですから」

「ちょっと、お前の中の僕の評価どうなってんの?」

「それはもちろん、最低だろう」

答えたのは私ではなかった。
いつの間にか追い付いていた夏油先生が長い黒髪を風になびかせて立っていた。

「こら、悟。私のなまえを拉致するんじゃないよ」

「お前のじゃないから!僕のだから!」

「いいから帰しなさい」

「嫌だね!渡したら、あんなことやこんなことをする気だろ。この淫行教師!」

「悟にだけは言われたくないよ」

夏油先生がため息をつく。それから先生は私に向かって両腕を差し伸べた。

「おいで、なまえ」

「渡さないって言っただろ」

五条先生が絶対に渡すものかとばかりに私の身体をしっかりと抱え直す。

「なまえも僕と一緒がいいよね?」

「いえ、とりあえず部屋に戻ってシャワーを浴びたいです」

「シャワーなら僕の部屋のを使わせてあげるから」

「それだと着替えがないので……」

「裸のままで良くない?ヤるでしょ、セックス」

「良くない。何を言っているんだ、君は」

夏油先生が静かにキレている。

「傑も交ざっていいからさ」

「えっ」

「えっ」

夏油先生がそれは考えつかなかったみたいな顔をするのを見て私は嫌な予感がした。

「最初に挿れるのを譲ってくれるなら」

「うーん、ま、いっか。いいよそれで」

良くない。何一つとして良くない。勝手に話をまとめないでほしい。
そういえば、この人達、学生時代からの親友同士だった。

「と言うわけだからさ。僕達と仲良く保健体育の勉強しよっ」

「私達の得意科目だから何も心配はいらないよ」

「じっくりたっぷりねっとり可愛がってあげるからね。……ふふ」

助けて!夜蛾学長!硝子さん!


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