私の中の深いところでドクドクと脈打っていたものが落ち着くと、小さく息をついた傑くんがそっと身体を離した。
ぴったりとくっついていた肌と肌が離れていくこの瞬間がいつも少し寂しい。

「大丈夫かい?」

「うん」

「気持ち良かった?」

恥じらいながら頷くと、優しく微笑んだ傑くんにキスをされた。

「ありがとう。私も気持ち良かったよ」

使用済みの避妊具を手際よく始末した傑くんに改めて抱き締められる。
傑くんは腕枕をしたがるのだが、それでは腕が痺れてしまうから、こうして抱き締められることで落ち着いたのだった。

「眠かったら寝てもいいよ」

「ん」

傑くんに甘えるようにすり寄ると、優しい手つきで背中を撫でられる。
確かに行為の後はいつも眠くて堪らないのだけど、こうして傑くんにくっつきながら他愛のないお話をするのが好きなので、頑張って起きていようと努力するのが常だった。

「ゴールデンウィークももう終わりだね」

「私達術師にはあってなきようなものだったけどね」

この一週間、傑くんは悟くんと一緒に毎日任務に出かけていたし、私は硝子ちゃんと次々と運ばれてくる怪我人の治療に追われていて連休とは縁遠い日々だったから、そうだねと笑って頷いた。

「もしかして、どこか行きたかった?」

「ううん、傑くん忙しそうだったし、そういうわけじゃないけど、何だか勿体なかったなって」

「ああ、確かにそんな気はするね」

傑くんが苦笑する。その唇が頬や額に落とされて、最後に私の唇を軽くついばんでから離れていった。

「繁忙期が終わったら、どこかに出かけよう。行きたい場所はあるかい?」

甘やかすような声音が耳に心地よい。
とろとろと眠りに誘うようなそれに答えるべく、必死に頭を働かせた。

「傑くんと一緒なら、どこでもいい」

「そんな可愛いことを言われると、また抱きたくなってしまうよ」

そう言いながらも、傑くんの手は優しく優しく私の身体を撫でていた。寝かしつけにかかっている。

「傑くんと一緒にいられるなら、本当にどこでもいいの」

ふわふわとした眠気に包まれながら答えれば、また優しいキスが降ってくる。

「私もだよ。例えどんな場所であっても、君がいるところが私にとっての理想郷さ」


 戻る 

- ナノ -