よく晴れて眩しいくらいに世界が明るく輝いている午後。
私は幼い頃からずっと側にいてくれた傑くんの妻になった。

「どうだい、私のお嫁さんは世界一綺麗だろう?」

「綺麗……!」

「綺麗!素敵!」

美々子と菜々子がはしゃいだ声をあげる。
白無垢を汚さないようにと配慮しているのだろう。恐る恐る触れてくる手を優しく取って頭を撫でてあげたら、嬉しそうに目を輝かせていた。

「でも、夏油様も素敵」

美々子の言葉に、菜々子だけでなく私も頷いていた。紋付き羽織袴姿の傑くんはいつにもまして男前だったから。清々しい佇まいの中に色気もあって、美丈夫という言葉がぴったりだ。狐か蛇の神様の化身と言われても納得してしまっただろう。

「ほんと食べちゃいたいくらい素敵だわ」

「もう人の旦那様ですからいけませんよ」

うっとりと傑くんを見つめるラルゥを菅田さんが窘める。

傑くんの提案で、彼の「家族」に集まって貰い、結婚式と披露宴代わりの食事会を開いているところなのだった。
戸籍のほうは孔さんが手を回してくれたから、今頃は法的にも無事夫婦になっているはずだ。

傑くんが高専から離反した時は、こんな日が来るとは思いもよらなかった。ずっと上層部からの追手に怯えながら隠れて暮らしていくのだと思っていた。
だからと言って、傑くんの手を離すという選択肢は一度も考えなかった。私達はずっと一緒だ。きっと、もう死ぬまで。

こんな明るい青空の下で、親しい人達に祝福されながら今日という日を迎えられて本当に幸せだと思う。

「疲れた?」

「ううん、大丈夫」

傑くんに手をとられて、そっと引き寄せられる。腰を抱かれて体重を預けると、揺るぎもせずに支えてくれる。

「幸せだなあと思って」

「私もだよ」

傑くんが頬に唇を寄せる。誰かの歓声が聞こえてきた。

「私を好きになってくれて、私を選んでくれてありがとう。昔もいまも、これから先も永遠に君だけを愛すると誓うよ」

「私も傑くんのことが大好き。ずっと一緒にいてね」

「もちろん。君が嫌だと言っても離さないよ」

傑くんが私の唇にキスをした。双子が邪魔にならないように、でも嬉しくて堪らないといった様子で傍らから私達を見守っている。

「私達はずっと一緒だ。例え死んでもね」


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