「あ、起きた?おはよう」

目が覚めると、見覚えのない天井をバックに五条先生の綺麗な顔が視界いっぱいに広がっていた。この世の至宝の如きそれを目にして思わず赤くなる。目隠しもサングラスもない先生の顔をこんなに至近距離で見るのは初めてだったので心臓がドキドキしていた。

「五条せんせい……?」

「そう、僕だよ。ちゃんとわかって偉いねえ」

新雪の色をした睫毛に縁取られた瞳が私を見つめて愛しげに細められる。
なんだろう。目が覚めた時からずっと妙な違和感がある。何かがおかしいと感じていた。

「ここ、どこですか?私、いつの間に」

「ここは僕のセーフハウスのひとつ。よく寝てたから、その間に連れて来ちゃった」

「どうして……」

「お前さ、僕以外の男にチョコを渡したでしょ。よりによって傑に」

「そ、それは」

「だから、もういっそのこと僕しか知らない場所に閉じ込めちゃおうと思って」

五条先生はにこにこと笑っているが、その口から語られる内容に私は戦慄した。
それはつまり、監禁されたということではないのか。

「あ、逃げようとしても無駄だよ。ここは強力な結界で守られているから、自力では出られない」

五条先生が言った。

「上層部も高専も説得済みだから問題ないよ。僕の子を孕んでもらうって言ったらあっさりお許しが出たからね」

「そ、そんな……!」

「ここで二人きりで暮らそう。無下限と六眼を受け継ぐ子供が出来るまで、何度でも抱いてあげる。ここに、僕の子を孕むまで」

五条先生が慈しむような手つきで私の下腹部をまさぐる。あまりのことに絶句している私に先生は優しくキスをした。こんな絶望的な状況であるにも関わらず、陶然としてしまうような甘いキスを。

「傑にも、誰にも渡さない。お前は僕のものだ。お前だって本当はこうなることを望んでたんだろ?ちゃんとわかってるよ」

私の唇を軽くついばむようにしてから、五条先生はそっと身を離した。名残惜しそうに私の頬を撫でる。

「面倒な仕事を片付けてくるから少しだけ待ってて。帰って来たらたっぷり可愛がってあげる」

「せ、先生、待って!」

「いい子にして待っててね」

そう告げると、五条先生はどこかへ瞬間移動してしまった。
独り残された部屋で、私は震えそうになる身体を両腕で抱き締めて涙をこぼした。

「助けて……夏油先生……」


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