朝、目が覚めて最初に思ったのは、お仕事行きたくない、だった。
何しろ身体が鉛のように重く、下半身に至っては泥のようという有り様だったので。

「すみません」

私を昨夜抱き潰した男は、何が嬉しいのか朝から上機嫌だった。

「職場まで車で送って行きますので」

ぷんすか怒っている私を宥めるように頭を撫でながら優しいキスをしてくる。
そんなことでは誤魔化されませんからね!

「昨夜は控えめに言って最高でした」

甲斐甲斐しく朝食を食べさせてくれながら赤屍さんが言った。満足そうな笑みを見ていると許してしまいそうになる。
このトマトとモッツァレラチーズのカプレーゼめちゃくちゃ美味しい。
そういえば、以前デパ地下のデリカテッセンのメニューを参考にしてると言っていたっけ。確かにお店に出しても通用する味だ。
このカボチャのポタージュも美味しい。

「調子に乗って抱き潰してしまってすみませんでした」

「オムライスが食べたいです」

「デミグラスとトマトケチャップどちらが良いですか?」

「ケチャップでハート書いて下さい」

「わかりました。ハートですね」

「お弁当にはミートボールを入れて下さい」

「忘れずに入れます」

合間合間に甘ったるいキスをしながら交わされる会話に、こういうのを骨抜きにされているって言うのかな、と思ってしまった私はたぶんもう駄目だ。


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