すっかり遅くなってしまった。

お風呂から上がり、乾かし終えた髪をブラッシングしてから部屋に戻ると、時計は既に真夜中ちょうどを示していた。

今日は金曜日だから仕事帰りに同僚と食事をしてから帰ったのだが、まだ話し足りなかったのか帰宅してすぐに電話があり、金曜ロードショーが終わるまでずっと話していたのだった。
それから久しぶりにのんびり湯船に浸かっていたらこんな時間になってしまった。
まあ、あとはもう寝るだけなのだが。

「あれ?」

明かりをつけようとスイッチに手を伸ばしかけたところで、ベッドの手前に見覚えのある帽子が落ちていることに気付いた。
あれは、確か、赤屍さんの──どうして私の部屋に?

警戒しながら近付く。

帽子を拾おうとしておかしなことに気が付いた。

“ベッドの下に無いはずの隙間がある”

真っ暗なそこから白い手が伸びてきて、素早く私の足首を掴んだ。

「ひっ──!」

あっという間にベッドの下の暗闇の中に引き摺り込まれる。




誰もいなくなり、静寂が訪れた室内。

再びベッドの下から伸びてきた手が帽子を掴み、帽子ごと暗闇の中に引っ込んだ。


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