手に持った線香花火の先が、パチパチと火花をあげて燃えている。

陽が落ちた別荘地はとても涼しく、少し肌寒いくらいだ。
こうしてウッドデッキから地面に向けて花火をしていると、周囲の暗い森が迫ってくるような錯覚を覚える。

「こうしていると、何だか寂しいような気持ちになりますね」

「線香花火は儚いですからね。感傷的になってしまうのでしょう」

私は頷いて、いかにも儚げな線香花火の火を見つめた。

寂しくなるのは花火のせいだけではないことを知っている。

明日にはもうこの別荘から発って家に帰らなければいけないからだ。

赤屍さんとお別れするわけではないけれど、一日中一緒にいられたこの別荘生活はもう終わってしまう。
そのことが残念でならない。

ぽとり、と火の玉が地面に落ちる。

赤屍さんのほうを振り返ると、優しいキスが落とされた。
それがあまりにも優しく甘いものだったから、瞳に涙が滲んだ。


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