もう初夏だというのに、私は頭から布団を被ってぶるぶる震えていた。 さっき見知らぬアドレスから届いたメールのせいだ。 内容は……何とも恐ろしいことに、“あの”フョードル・ドストエフスキーからの愛の告白と次元を越えての拉致予告。 もちろん、そんなことはあり得ないとわかっている。 しかし、何しろ相手が相手なので、絶対にないとは言い切れないのが怖いところだった。 ──玄関のチャイムが鳴っている。 こんな時間にいったい誰が……と不思議に思いながら玄関までそろりそろりと歩いていき、覗き窓を覗き込む。 「ヒッ!?」 良く知っている顔がアップで見てしまい、思わず声を漏らしてしまう。 恐怖のあまりちびるところだった。 「そこにいるのはわかっています。開けて下さい」 不審者として通報すればいいのでは、と一瞬考えたが、すぐに取り消す。 死体が増えるだけだ。 チェーンがしっかりかかっているのを確かめてから、私はまた元の場所に戻り、頭から布団を被った。 「どうして開けて下さらないんですか。せっかく逢いに来たというのに」 何も聞こえない。 何も聞こえない。 何も聞こえない。 自分に暗示をかけるように言い聞かせながら、暗闇の中、ただ震えていることしか出来なかった。 「酷いじゃないですか。何故開けてくれなかったんです?」 「!?」 すぐ側で聞こえた声とともに布団を剥ぎ取られる。 そこには 「お迎えに上がりましたよ。さあ、ぼくと一緒に行きましょう。何も心配はいりません。これからは、ずっとぼくが側にいますよ。ずっと……ね」 |