面接官は草壁さんだった。 高校まで副風紀委員長として雲雀さんにつき従っていた人だ。 今でも右腕を務めているらしいと知って何だか嬉しくなった。 「お久しぶりです」 「ああ。高校卒業以来か」 「はい、大学で並盛から出ましたから」 「履歴書によると大学卒業後はずっと銀行勤めだったらしいな。どうしてまた風紀財団に転職しようと思ったんだ?」 「雲雀さんのお側で力になりたいと思ったからです」 私はきっぱりと言い切った。 「銀行勤めはあくまでもキャリアを積むためでした。必ずお役に立ってみせます」 「いいね」 「恭さん!」 「その子はうるさくないからちょうどいい」 数年ぶりに見る雲雀さんは恐ろしいほど男前だった。 スーツがめちゃくちゃ似合っている。 アジアンビューティという言葉がぴったりだった。 どうしよう。惚れてしまいそうだ。 いや、実はもう恋しちゃってたりする。 「君のことは覚えてる」 「は、はいっ」 「採用だよ。明日からうちにおいで」 「ありがとうございます!」 「制服も可愛かったけど、スーツもいいね」 他の人ならセクハラになりそうな言葉も雲雀さんなら大歓迎だ。 私はすっかり舞い上がっていた。 だから、気づかなかったのだ。 草壁さんが心配そうな顔で私を見ていたことに。 「嬉しいよ。一度は逃げた獲物が、そっちから飛び込んできてくれたんだからね」 「雲雀さん…?」 「もう逃がさない」 翌日からアプローチという名の猛攻撃を受けることになるのだが、もちろん私ごときが本気になった雲雀さんに敵うはずもなかった。 |