「ですから、つがいになってしまえば良いのです。そうすれば、こちらのもの」 「なるほどな」 お風呂から出て自室に向かう途中、縁側でお酒を飲んでいる三日月と小狐丸を見つけた。 「仲良しだね」 「ぬしさま」 小狐丸がすくっと立ち上がる。 私の後ろに回ったかと思うと、うなじに鼻面を押し付けてすんすんと匂いを嗅いだ。 「一期殿のニオイが致します」 「えっ」 「妙ですね。風呂上がりなのではありませんか?」 「いや、えっと」 「ああ、やはり。一期殿のニオイに混ざって良い香りが致します。おや、まだ濡れておりますね」 ぺろり。 うなじを舐められて飛び上がる。 「ひゃあっ!」 「濡れたままではいけません。どれ、この小狐が毛繕いをして差し上げましょう」 「いい!いいから!」 濡れた肌を舐めようとする小狐丸と攻防を繰り広げていると、朗らかな笑い声が耳をくすぐった。 「はっはっはっ、よきかな、よきかな」 「よくない!助けて下さい!」 「そうは言ってもなあ、主よ」 「邪魔だて無用。ぬしさまはいずれ私のつがいとなる私の獲物なれば。抵抗なさるというのなら、今ここで食ろうても良いのですぞ」 「きゃー!」 「お許し下さい。野生ゆえ」 結局、長谷部が駆けつけてきて助けてくれた。 |