喉が渇いた。 審神者のおもな仕事はデスクワークだ。 私の場合、本丸の離れを自室とし、そこにパソコンやら資料やらを持ち込んでいる。 だから、殆ど部屋から出ずに仕事が出来てしまう。 元々集中すると周りが見えなくなる性格であるということもあり、気がつくとオーバーワークという事も多い。 「ご自分の限界を見極めて下さい」 「ご無理はなさらないで下さい」 と長谷部に口うるさく言われてしまうのも仕方のないことだった。 「大将、だいぶ疲れてるみたいだな」 「あ、薬研」 ふらふらと離れを出て台所に向かっている途中、白衣を着た薬研に出会った。 「喉が渇いたんだろう?それならちょうどいいものがあるぜ」 そう言う薬研に手を引かれて近くの部屋に入る。 薬品と何故か柑橘系の匂いが辺りに漂っていた。 「ほら、大将」 コップを渡される。 中身は色も匂いもオレンジジュースのようだ。 「ぐいっと一気にな」 言われるままグラスに口をつける。 一口飲んでみた感じは…やっぱりオレンジジュースだった。 安心してごくごくと飲み干す。 喉が渇いていたのであっという間だった。 「大将、ちょっと暑いんじゃないか?」 言われてみればそんな気もする。 私は着物の上に着ていた羽織りを脱いだ。 「それじゃ足りないだろう」 薬研がぴとりと頬に手をあてる。 冷たくて気持ちがいい。 その手はゆるゆると頬を撫でてから首筋を降りていった。 「気持ちいいか?」 「ん……」 胸元に手を差し込まれると、何故か足から力が抜けてその場にへたりこんでしまった。 後ろから薬研が抱き支えてくれる。 片手は着物の胸元に差し込まれ、もう片手は着物の裾を割って太ももを撫で上げていた。 くすぐったいような、じれったいような、ひんやりしていて気持ちがいい。 「好きだぜ、たーいしょ」 薬研が耳元で囁く。 後ろを振り向こうとすると薬研の顔が近づいてきた。 唇に、 「主!!!」 バン!と襖が乱暴に開けられて、長谷部が飛び込んできた。 薬研が舌打ちする。 「いいところで」 「薬研!貴様!」 「…薬研」 「い、いち兄…!」 長谷部の後ろに佇む一期を見て薬研が「ヤバい」という顔になる。 「弟の不始末は私の責任。どうかこの一期一振にお任せ下さい」 薬研が一期に引きずられていく。 私は着物の乱れを手早く直してくれた長谷部に抱き上げられた。 |