「集合!」

その一言で、練習中だった部員達が一斉に集まってきた。
ボールの音が止み、バッシュと体育館の床が擦れるキュキュキュッという音が辺りに響く。

「次の模擬戦の組み合わせを発表する」

一瞬で空気が変わったのが分かった。
皆ひと言も聞き洩らすまいと、集中している。

「呼ばれた者はアップに入れ」

「はいっ!!」

声を張り上げているわけじゃないのに、征くんの声はよく通る。
彼の言葉に自然と耳を傾けてしまう。
それだけじゃなく、視野が広く、状況判断力も優れている。
ただ単に頭が良いのではなく、頭の回転も早い。

生まれながらに人の上に立つ才能を持つ者がいるとすれば、まさしく彼のような人を指すのだろう。
この世には、生まれながらに特出した才能を持っている人間がいるのだ。
努力ではどうにもならない差が存在するのだ。

そんなことを考えていると、肩にふわりとあたたかいものが掛けられた。
見れば、水色と白を基調としたジャージが。
皆はもう移動を始めている。

「着ていろ」

「でも、」

「僕はいい」

それだと征くんが寒いんじゃ、と言いかけたのを遮って彼は薄く笑んだ。


「お前はそこに座って僕だけを見ていろ」


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