ゲーム開始直後、ザンザスは真っ直ぐなまえ目がけてダッシュし、彼女を小脇に抱えてその場から逃走した。
そうして一先ず民家の一つに身を隠したのだが、エリア規制が始まれば移動せざるを得なくなるだろう。

ハンターは三人。
ザンザスの実力であれば瞬殺出来るレベルの雑魚だ。
しかし、どんな形であれハンターに危害を加えたプレイヤーはその瞬間失格となってしまう。
カスをかっ消せない苛立ちからザンザスは舌打ちした。

「あの…私、ここに大人しく隠れてるから、もし動きたかったら……」

「そうしたけりゃハナからそうしてる。余計な心配はするな」

「うん…有難う」

なまえは微笑んで隣に座る男に身をすり寄せた。
それに応えるように些か荒っぽい手つきでガシガシと頭を撫でられる。


辺りはとても静かだ。
微かに梟の鳴き声が聞こえてくるだけで、叫び声も走る足音も聞こえてこない。

「みんな大丈夫かなぁ…」

「さあな」

膝を抱えて座っているなまえの横で、ザンザスは腕組みして目を閉じている。
そうしながらも彼が周囲の様子を警戒しているのが分かった。
仕事の時もこんな感じなのかもしれない。
この状況においては実に頼もしい存在だ。

「!!」

突然電子音が鳴り、なまえはビクッと身体を跳ねさせた。

「あ、メール?」

あたふたとスマホを取り出すその隣で、ザンザスも同じように片手でスマホを取り出し受信メールを確認している。

「指令(ミッション)だって」

「ハッ、くだらねえ」

ザンザスは眉間に皺を寄せて吐き捨てた。
そもそも彼はこのお遊び自体が気にいらないのだ。
メールは本部から送信されたもので、指令(ミッション)についての指示が書かれている。
それは以下のような内容だった。


  * * *


─指令 ミッション─

最強のハンター・赤屍蔵人を乗せたトラックが出発した!

トラックは10分後にゲートに到着予定だ。

それを防ぐためには、時間内にゲートの鍵Aと鍵Bを入手してゲートを封鎖しなければならない。

鍵Aは東の搭、
鍵Bは西の搭にある。

ゲートを封鎖出来なければ赤屍蔵人が逃走者狩りを始めてしまうぞ。
さあ、ウサギ狩りの始まりだ!


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