壇上にスポットライトが当たる。
ライトを浴びた黒衣の男が優雅に一礼してみせると、客席からはドッと拍手が湧き起こった。

「楽園マジックショーへようこそ。まずは、私、赤屍蔵人のブラッディ・ソードの餌食となる哀れなチェシャ猫クンをご紹介しましょう」

赤屍から少し離れた場所に二つ目のスポットライトが当たる。
そこには細長いボックスが横にしてワゴンの上に置かれていた。
ボックスは筒状になっており、その中には灰色のフードを頭からすっぽり被った男が入っている。
ちょうど頭だけがボックスから出る形である。

「さて…では、チェシャ猫クン。覚悟はよろしいですか?」

そう言うなり、赤屍は手にしていた赤い剣でボックスを斬りつけた。
客席から悲鳴が上がる。
ボックスはちょうどチェシャ猫の首の辺りで斬れてしまっていた。

「さあ、皆さん。可哀想な猫クンの頭をよくご覧下さい」

赤屍は猫の首を持ち上げると、客席にニヤニヤ笑いの形に裂けた口許がよく見えるようにして前にぶら下げた。

「チェシャ猫クン、皆さんにご挨拶は?」

「コンバンワー」

切口から血を滴らせている生首が呑気な声を出す。
客席からまたもや悲鳴が上がった。

赤屍はにっこりして決め台詞を口にした。
打ち合わせ通り、チェシャ猫もそれに唱和する。

「「てじなーにゃっ!」」



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