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「後は冷やせば食べられます。三十分くらいかかると思いますけど…」

「ええぇぇ〜? そんなに?」

あからさまにガッカリした顔をするロイドに、なまえは困ったように微笑む。
本当に子供みたいな男だ。

「そうですよ。もう少しだけ我慢して下さい」

カタンと音がしてそちらを見ると、シュナイゼルが椅子から立ち上がったところだった。
ルルーシュのものとは少し色合いが違う、ブルーに近い紫色の瞳が、なまえの瞳を捉えて柔らかく細められる。

「なまえ」

「はい」

「君はどうして私よりもロイドに懐いているんだい?」

さすがのロイドも思わず顔を引きつらせた。

(うわあ…本人に直接聞いちゃったよ、この人!しかも、思いっきりストレートに)

なまえは質問の意図がわからず、不思議そうに首を傾げてシュナイゼルを見上げている。

「そう…見えますか?」

「そう見えるよ」

「あの、もしそういう風に見えるんだとしたら、たぶんロイドさんのほうが接する機会が多いからじゃないかと思うんですけど…」

「さっきロイドにも同じ事を言われたよ」

シュナイゼルが苦笑する。
なまえはますます困った顔になった。

「シュナイゼル様には心から感謝しています。懐いているというのは、そういう意味ではなくて、ですか?」

「ああ、いや…そういう意味ではないのだが──ロイド、笑い過ぎだよ」

くの字に身を折り曲げてひいひい笑っているロイドを、シュナイゼルは穏やかな声で窘めた。

「ねぇ、なまえちゃん。なまえちゃんは殿下や僕の事が好きかい?」

涙を白衣の袖で拭いながらロイドが尋ねる。

「勿論です。シュナイゼル様も、ロイドさんもセシルさんも、大好きです。皆さん良くして下さって…本当に感謝しています」

「うんうん。ま、そうくるよねぇ。僕もなまえちゃんの事、大好きだよ。殿下もですよね?」

「勿論」

二人の返事になまえはちょっと照れくさそうに微笑むと、プリンを見てきます、と言って冷蔵庫へ向かった。
その後ろ姿を見つめながら、シュナイゼルが、ふっと唇を笑ませる。

「やられたな…上手く逃がしたね、ロイド」

「そんなぁ…僕は殿下の手助けがしたかっただけですよ」

「邪魔の間違いではないかな? あの小鳥といい、お前はどうも私のお気に入りを悪気なく逃がしてしまう才能があるようだ」

プリンの固まり具合を確認しているなまえを瞳を細めて見つめているシュナイゼルに、ロイドはちらりと真剣な眼差しを走らせた。

「お気に入り程度なら問題ないんですがねぇ」

「それはどういう意味かな」

「いえいえ、殿下に見初められちゃうなんてなまえちゃんもラッキーだなぁ、なーんて」

視線の先では、プリンの容器を二つ取り出したなまえが、それぞれをデザート用の皿に移している。



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