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やっと一週間が終わった。
予報通り天気は悪いが、仕事を終えたあとの金曜日の夜とあって、開放的な気分だった。
久しぶりにお酒でも飲もうかな。
買ってきたはいいけれど飲むタイミングを逃して冷蔵庫に入ったままだったレモンサワーの缶を取り出して、何気なくカーテンを捲り、窓の外へ視線を向ける。
その時だった。
街灯の下に誰かが立っているのが見えたのは。
一瞬、不審者かと身構えたが、よくよく目をこらして見れば、それは見知った人物だった。

「降谷さん……?」

慌ててタオルを手に部屋を飛び出す。

「どうしたんですか、こんなところで……いえ、とりあえず中に入って下さい」

降谷さんの濡れた髪にタオルを被せて彼の手を引き、部屋の中に招き入れる。
そのままわけも聞かず脱衣所に押し込んだ。

「シャワーを浴びて来て下さい。しっかり暖まって来て下さいね」

一旦脱衣所を出て着替えの下着とスウェットを用意し、少しして浴室から水音が聞こえてきたのを確認してから、改めて脱衣所に入る。
下着とスウェットは父が泊まりに来た時のために買い置きしてあったものだが、まだどちらも未使用だ。
それより問題なのは、明らかにオーダーメイドとわかるスーツのジャケットをどうするかだ。まさか乾燥機に入れるわけにもいかないだろう。
とりあえず水気を拭き取って吊るしておくしかなさそうだ。

「すまない。君に迷惑をかけるつもりはなかった」

シャワーを浴びて出て来た降谷さんからは湯気が立ちのぼっていた。
良かった。ちゃんと暖まってくれて。

「君のことを考えていたら、自然と足が動いて、いつの間にかここまで来てしまっていた」

「どうして、チャイムを押してくれなかったんですか?」

降谷さんは顔を伏せ、それからゆっくりと私の顔を見据えた。
何故だか、物凄く思い詰めた様子で。

「この前、君の部屋から赤井が出て来るのを見た。君は……あの男のことが好きなのか?」

どうしよう。なんて答えよう?




「あれは落とし物を届けに来てくれただけですよ」


「実は……そうなんです。ごめんなさい」



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