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「助手席に乗るのは久しぶりです」

そう言って笑う零くんを乗せて一駅先にある大型ショッピングモールにやって来ていた。
休みの日にこんなに早起きしたのは久しぶりだ。今日は零くんを連れて買い物に行く約束をしていたし、何より私が起きるより早く零くんが起きて朝食を作ってくれたので、起きないわけにはいかなかったのである。
もっと寝ていたかったと訴える軟弱な身体に鞭打って車を運転し、隣町までやって来たのだが、開店間もない時間だというのにもうそこそこ混み始めている。
零くんには軽く変装して貰った。金髪はキャスケット帽で隠して、サングラスとマスクをつけてしまえばたぶん大丈夫だろう。

「まずは着替えを買いましょう。好きなブランドとかありますか?」

「僕なら安売りの服で構いませんよ」

「そういうわけにはいきません。零くんにはちゃんとしたものを着て貰わなければ」

渋る零くんを連れて何軒か男性用の服を扱う店を回り、普段着からちょっと良いスーツなどを買い揃えた。あと、着心地の良さそうなルームウェアも何着か。下着はさすがに零くんにカードを渡して本人に買って貰った。
それから、男性に必要な日用品も。電気シェーバーとかシェービングクリームとかそういった細々したものである。
零くんが遠慮しまくるので、あの手この手で聞き出して買い揃えた。
ふかふかの布団で寝て欲しくて布団も新しいものを買った。

「何から何まですみません」

「気にしないで下さい。いつまでこっちにいられるかわからない以上、すぐに駄目になるようなものだとかえって何度も買い替えなきゃいけなくなるし、それなら最初から良いものを買い替えるほうがいいですから」

というのは建前で、推しに貢ぐのが嬉しくて仕方がなかったのだ。
私が買ってあげた服を零くんが身に付けるのだと考えただけでアドレナリンがドバドバ出た。

「運転免許さえあれば車を買ってあげたいくらいです」

「さすがにそれは申し訳ないですよ」

零くんは苦笑したけど、私はかなり本気だった。彼の免許がこっちでも使えたらなあ。

「お昼はどうします?食べて帰りましょうか?」

「材料さえ買って頂ければ僕が作りますよ。何か食べたいものはありますか?」

「えっと、じゃあ、オムライスが食べたいです」

「わかりました。夕食のリクエストもありますか?」

「ミートボールとキャベツのミルクトマト煮が食べたいです」

「僕が開発したメニューですね。了解です」

一度車に戻って買った荷物をトランクに詰め込んでから、私と零くんは食材を買うために食品売場に向かった。

カートを押しながらてきぱきと野菜や肉をカゴに入れて行く零くんは、本当にカッコ良かった。こんな人と結婚出来たら幸せなんだろうなあ。

レジに着き、支払いを済ませる。

「さあ、帰りましょうか」

帰るという言葉を使ってくれた零くんに嬉しくなりながら、私達は車で帰宅したのだった。


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