「──という話をしてたんです」

「へぇ」

玉章はくすっと笑った。性格はアレだが、こういう笑顔は意外に可愛らしい。

「なんだ、ただの焼きもちか」

心配して損したよなどと言って、玉章はなまえの髪を撫でる。
結局あの後食べられてしまったなまえは少々むくれながらされるがままになっていた。
布団の冷たさが、濃厚な交合を終えた後の気怠い身体に丁度良い。

「心配しなくても、君が想像しているような事はしてないよ」

「別にいいです。玉章さんが女の子を手当たり次第に食べまくってる女たらしだったとしても、私はぜんっぜん気にしませんから」

「気にしてるじゃないか」

「気にしてません」

なまえは玉章の肩口に頬を預け、その身体に腕を回して抱きついた。
細いけれどもちゃんと筋肉がついている。
骨ばって硬い、男の人の身体。

何人の女がこの身体を見たのだろう。触れたのだろう。
それを思うと、やはりまだ少し胸が苦しくなる。

「私も、玉章さんに会う前に誰かとしておけば良かった…」

「冗談じゃない。そんな事は僕が許さないよ」

玉章の手がなまえの背中を這い、背骨に添ってゆっくりと撫であげていく。
手洗い鬼が玉章の目付きは爬虫類のようだと言っていたが、いま背中を這いのぼる手は蛇のようだった。
おぞましさはないけれども、快感とほんの少しの恐怖に背筋がぞくぞくする。
妖怪としての畏れとは違う怖さを感じる。

「僕のものに手を出そうとする愚かな男は、人間だろうが妖怪だろうが、いっそ殺してくれと叫びたくなるような酷い目に遭わせてじっくりといたぶり尽くしてから殺してやる。君は閉じ込めてお仕置きだ」

「んっ…」

脚と脚が絡みあい、剥き出しになったままの敏感な部分が甘く擦られて、なまえは小さく声を漏らした。
恐ろしい内容にも関わらず、その声に含まれている自分への執着を嬉しく思ってしまう。
頭も身体も甘い毒がまわったみたいに痺れていく。

「だから、馬鹿な真似はするんじゃないよ」

小さく頷いたなまえに、ふふと笑い、玉章は彼女の脚を開かせた。


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