自宅に戻った七海は早速母に確認してみることにした。

「ねえ、お母さん、お隣の幸村さんちっていつからお隣さんだったっけ?ほ、ほら、精市くん来年高校生だし、もうどれくらいの付き合いになるのかなぁって」

「はあ?何言ってるの。建てた時からずっとお隣さんだったでしょ」

変な子ねぇと笑われて、微妙な気分になる。
母の頭の中には七海が知らない14年間分の記憶が存在しているのだ。
そしてソレこそがこの世界では正しい歴史なのである。
七海と幸村が異端なのだ。

夜遅く帰宅した父の反応も同じだった。

自分以外の家族が皆当たり前のようにこの現象受け入れている。
その事に七海は恐怖を覚えた。



「俺も似たようなものだったよ」

報告会の日、幸村の部屋で七海の話を聞いた彼はそう答えた。
今日は白いシャツを着て腕を組んでいる。
手首に巻いている黒いパワーリストが、端正な顔立ちと不似合いな気がしてアンバランスな印象を受けた。

「キミの家とは、俺達が生まれる前から隣同士で、家族ぐるみで仲良く付き合ってきた間柄だそうだ。妹も随分キミになついているみたいだったよ」

「うん…朝、家の前で会って挨拶された時も、そうなんだろうなって感じだった」

朝会った時の様子を思い出し、七海は少しくすぐったいような気分になった。
母親似の美少女である妹さんに懐かれて、戸惑いはあっても不快感は感じなかった。


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