「鈴木さんはどこに行っちゃったのかな?」

「さあ、分からない。でも、もしかすると彼らが全ての原因なのかもしれないね。俺達に共通してるのは『隣は鈴木さんだった』という事だけだから」

「そうだね…」

室内に沈黙が落ちた。
でも、もうお互いに相手を信頼しているので、気まずくはならない。

「…私、今から凄くおかしな事を言うかもしれない」

「いいよ。話してみて」

「鈴木さんは二つの世界に同時に存在していて、それぞれ、うちの隣と幸村家の隣に住んでいた……っていうのは?」

「うん。俺も同じ事を考えてた」

あっさり肯定されて七海は驚いた顔で幸村を見た。
彼は笑っている。

「そんな馬鹿なことあるはずがないと言うと思ったかい?」

「確かにそんな事言ったら、今の私達の状態は説明出来ないよね」

「そういうこと。だから俺は信じるよ、キミを」

幸村が七海の手を握る。
七海はその手に指を絡めて握り返した。
このぬくもりは本物だ。

「幸村くんがいてくれて本当に良かった…。私一人だけだったら、きっと自分の頭がおかしくなったと思って耐えられなかったと思う」

「それは俺も同じだよ。キミがいてくれて良かった」

繋いだ手に力がこもる。
彼の緩やかに波打つ彼の髪だとか、綺麗に整った中性的な顔立ちだとか。
こうして間近で見ると、改めてドキドキしてくるからおかしなものだ。
今まではそれどころじゃなかったから、というせいもある。

「何だかよく分からない現象のせいでこうなったわけだけど、今から仲良くやっていけないかな、俺達」

「うん。こちらこそ、よろしくお願いします」


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