「ねえ、幸村くん。おかしいのは…昨日と変わってるのは、私達の家が隣になったっていうことだけ?」

「そうだと思うけど。キミが言いたい事は何となく分かるよ。自分が知ってるはずの今までの世界と他にも違ってる部分がないかどうか確認してみたほうがいいってことだろう?」

「うん…」

何だか嫌な予感がする。

「それに…どうして私達だけなんだろう」

七海は水の入ったグラスを両手で包み込みながら言った。

「催眠っていうのかな?お母さん達は誰かに記憶を操作されたんだと思う?」

「分からない。でもそう考えるのが妥当かもしれないな」

口元に手を当てて考え込んでいた幸村が、ふと七海を見て言った。

「キミ、SF映画や小説は好き?」

「ううん…そんなにすごく興味があるってわけじゃないかな。話題になってたり友達に勧められたら見る感じ。好きなのはゴダールとかのフランス映画だから、今みたいな状況の参考にはならないよね…」

「俺も好きだよ、フランス映画。キミとは話が合いそうだ」

幸村はちょっと笑って、それからまた眉を下げて「困ったな」と呟いた。

「でも困ったな。俺もそんなに詳しいわけじゃないし」

「お互い知恵は出し尽くした感じだよね」

「自分に起こってる事っていうのを隠して、こういう現象をどう思う?って周りの人に聞いてみるのはどうかな」

「なるほどね…」

「いきなり何を言い出すんだって不審がられそうだけど、やってみる価値はあるな。幸い、俺の知り合いに頼りになりそうな奴が何人かいるから、俺達じゃ思いつかない意見を出してくれるかもしれない」

「私も友達に聞いてみる。SFやオカルト好きな子がいるから何かわかるかも。あと、似たような事がないかネットで調べてみる」

「じゃあ、今度の週末にまたここでお互い報告し合うということでいいかな?」

「うん」

どうなることかと思ったが、何だか同志が出来たようで心強い。


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