お互いに情報を出して話し合った結果、色々な事が分かってきた。
幸村はさっき帰って来る時、庭先で七海の母に会ったらしい。
自然に名前を呼ばれて挨拶をされて、それでおかしいと感じながら家に帰ったら七海がいたというわけだ。

「昨日までは何も変わったことなんてなかった…と思う」

七海は昨日の様子を思い出しながら言った。

「いつも通り学校に行って、帰ってきて家でご飯食べたり友達と電話したりして、夜は普通に寝て……それで、今日になったら突然」

「俺もだよ。昨日までは何ともなかった。間違いない。部活で夜帰って来た時にはまだ隣は『鈴木さん』だった」

幸村は考え込んでいるように瞳を伏せてそう言うと、七海を見た。

「立海大附属高校、って知ってるかい?」

「それが幸村くんの学校の名前?」

幸村が頷く。
七海は一生懸命考えてみたが、似たような名前の学校は記憶の中になかった。

「ううん…聞いたことない。それは、勿論、私が神奈川の全部の学校を知ってるわけじゃないけど、でも、家から通える圏内にある学校なら名前ぐらい聞いたことあるはずだし、テニスで有名な学校だって言うなら、普通知らないわけないよね?」

「ああ、俺もそう思うよ」

幸村はテニス部で、かなりの強豪校であるらしい。
ついでに七海の学校の名前も聞いてみたけれど、やはり幸村は知らなかった。

「父さんはまだ仕事中だから分からないけど、母さんと妹はキミの家族の事を知ってるみたいだった」

「うちは、お母さんは幸村くん達の事を知ってた。お父さんはまだ分からない、けど……」

七海はこみあげてくる悪寒に口元を押さえた。
本当に吐くまではいかないけど、例えば血とかグロい光景を見た時みたいな気持ち悪さと目眩を感じる。

「気持ち悪い……あ、あなたのことじゃなくて、」

「分かってる。俺も同じ気分だよ」

幸村が七海に水を勧めながら言った。

「気持ちが悪い。まさにそうとしか言い様がないね」


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