「キミは誰だい?」 男の子は部屋に入るなり、七海を真っ直ぐ見つめてそう尋ねてきた。 「うちの隣は鈴木さんだったはずだ。そして、鈴木さんには子供はいなかった」 まるで尋問のような口調に七海も黙ってはいられなかった。 「そ、それはこっちの台詞だよ!うちのお隣は鈴木さんで、夫婦二人暮らしだったはずなのに、幸村なんて家族、今まで聞いた事もないのに……!」 言い返しながら、声が震えてくる。 何だか視界もぼやけてきた。 「お、お母さんは、今までずっとそうだったみたいに話すし……私…頭が変になっちゃったんじゃないかって………」 おまけに目から水まで出てきた。 手で乱暴に拭おうとすると、男の子に止められた。 ハンカチで丁寧に拭いてくれる。 「…ごめん」 誠実な声音で謝罪された。 「俺も混乱してたみたいだ。キミを責めるような言い方になってしまってすまない」 「ううん…」 七海も混乱しているのは同じなので、彼の気持ちはよくわかる。 「俺は幸村精市。キミは?」 「七瀬七海です」 「初めまして…だよね?俺達」 幸村が情けなく眉を下げて言ったので、七海は力強く頷いて彼を肯定した。 |