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ドリンクを作るために施設の中に入ると、廊下で青学の桜乃ちゃんと朋香ちゃんに出会った。

「あっ、七海さん!」

「二人ともどうしたの?」

話を聞くと、どうやらドリンクを作る場所がわからなくて迷っていたらしい。

「私も今から作りに行くところだから一緒に行こう」

「ありがとうございます!」

「助かりました!」

桜乃ちゃん方向音痴なんだっけ?
とにかく、困っているところを助けてあげられて良かった。

ドリンク用の厨房(なんと専用だそうだ)に到着すると、私は手早くみんなの分のドリンクを作って冷蔵庫に入れた。

桜乃ちゃん達を見れば、大分慣れた手つきになって来ている。
成長してるんだなと嬉しくなった。

「桜乃ちゃん、前から可愛かったけど更に可愛くなったね。モテるでしょ」

「そ、そんな…七海さんのほうが可愛いです」

赤くなってもじもじする様子が堪らなく可愛らしい。

「可愛い〜っ!」

思わず抱きしめると、後ろから呆れたような声が聞こえてきた。

「何をしているんですか、キミは」

「あ、はじめちゃん」

はじめちゃんが一年の男子を引き連れてやって来たところだった。

「スキンシップ」

「程々にしてあげないと困っているじゃないですか」

「優しいね、はじめちゃん。はじめちゃんも桜乃ちゃんみたいな女の子が好き?」

「馬鹿なことを言ってないで仕事をしなさい」

怒られてしまった。

タオルの用意をして冷蔵庫からドリンクを取り出す。
うん、ちょうどいい感じだ。

カゴに入れたドリンクとタオルをテニスコートに運んで行く。

合同合宿というと、和気あいあいとしたイメージがあるが、とんでもない。
幸村くんによると、U-17の時と同じくらい充実した練習メニューが組まれているのだそうだ。

テニスコートにいるみんなはまだ午前中だというのに既に汗だくになっていた。
相当ハードであることは間違いない。

幸村くんと目が合って、彼が頷いたのを確認してから声を上げる。

「タオルとドリンク、どうぞ!」

「おー、ありがてぇ」

「待ってたナリ」

みんなに配って回っていると、隣のコートにいた不二くんが歩いて来て言った。

「七海ちゃん、ドリンク貰っていいかな?」

「どうしたの?」

「それが、配合を間違えちゃったみたいで一部のドリンクだけ殆ど水なんだ」

「そういうことなら余分に作ってあるからどうぞ」

「ありがとう」

「敵に塩を送るなんてキミも大概御人好しですね」

「はじめちゃん」

どうやら不二くんを見つけて対抗心から何か言いに来たらしい。

「みんな汗だくだからシャワー浴びたいよね。お風呂の時間まで待てそう?」

「きついな…」

「だよね」

みんなの惨状を見て苦笑する。

「はじめちゃん、一緒に入る?」

「いつの話をしてるんですか」

「さっきの言い方だと、まるで一緒にお風呂に入った事があるみたいに聞こえたんだけど」

「うん、小さい頃にね」

「へえ…」

「不二くん、めっちゃ殺気出とるで」

「子供の頃の話ですよ」

「6歳くらいまで一緒に入ってたっけ?懐かしいなぁ」

子供の頃のことを思い出しながら続ける。

「今思えば、はじめちゃんはもう性別の違いについて意識しはじめてたんだよね。でも、私はまだ全然まったくさっぱりそんな事考えてなかったから、恥ずかしがるはじめちゃんの服を無理矢理脱がしてお風呂に引っ張り込んでたんだよね」

「積極的だな」

「一度中に入れちゃえば、はじめちゃんも覚悟が決まるって言うか、積極的になるんだけど」

「エロいのう」

「耳の後ろはちゃんと洗ったのかとか、トリートメントはちゃんと時間を置いてから流さないとダメだとか」

「おかんか」

「洗い残しがないかチェックしてくれたよね」

「観月、ちょっと向こうで話そうか」

「ラケットとボール持って何するつもりだよ幸村くん…」

「そりゃ当然五感剥奪的な何かだろ」

「落ち着け精市。今お前を犯罪者にするわけにはいかない」


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