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バスからフェリーに乗り継いで到着した合宿所は、想像以上の広さだった。
興奮する赤也くんを宥め、幸村くんが跡部くんに挨拶をしている。

「七海、マネージャーだけ集まって話があるみたいだ」

「じゃあちょっと行って来ます」

「うん。また後で」

幸村くん達と分かれて集合場所へ向かうと、参加校では私が一番乗りだった。

ちらほらと人が増えていき、10分後には全校のマネージャーが集まっていて、早速説明が始まる。

コートの整備や球拾い、食事の支度などの宿舎内での雑務は専門のスタッフを雇っているから心配しなくていいということだった。
これならマネージャーは選手の管理に集中出来る。
いつも選手のために尽くしてくれているのだから、たまには楽をしてもいいだろうという跡部くんの配慮によるものだ。

高校生の内からこれだけ人のことを考えて手配出来るのは、本当に凄いの一言に尽きる。
彼はやはりキングなのだ。人の上に立って采配を奮うことが出来る資質の持ち主なのだろう。

「七海」

説明が終わって幸村くん達のもとへ戻ろうとしていたら、はじめちゃんに声をかけられた。
彼が言うには、マネージャーが集められている間に、選手のほうにも説明会があったらしい。
はじめちゃんはそちらに出ていたからマネージャーの集まりには来られなかったのだ。

「マネージャーの仕事について説明されたのでしょう。ボクにも教えてくれませんか」

「そう来ると思ってメモ取っておいたよ」

「さすがです」

満足げに口元を緩めたはじめちゃんに、複写式になっているメモ帳のさっき書き込んだものを一枚渡し、自分が聞いた内容を話して聞かせた。

「ありがとう。助かりました」

「どういたしまして。お互い頑張ろうね」

「ええ。補欠校扱いなのが気に入りませんが……まあ、大会の成績を考えれば仕方ないのかもしれませんね」

「観月じゃないか」

「あっ、幸村くん」

選手の説明会を終えた幸村くん達が戻って来て、無事合流することが出来た。

「七海がいつもお世話になっています」

「いや、こちらこそ。七海がいないと、もう立海テニス部は成り立たないくらいだよ」

「なんで観月さんがいるんスか?上位校だけだと思ってました」

「こら、赤也くん」

「その余裕がいつまで続くか見物ですね」

はじめちゃんが不敵に微笑む。

「今年こそ、我が聖ルドルフが頂点に立ってみせますよ」

「ふふ、意気込みは買うけど、頂点に立つのは俺達立海だよ」

幸村くんとはじめちゃんの間にバチバチと見えない火花が散った気がした。


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